忘れた頃にやってくるフランス紀行。
今回はフランス北部の町、ベルギーとの国境にも近いリールに向かいます。 歴史ではパリ・サン=ラザール駅に劣りますが、駅舎の規模、荘厳さではパリのターミナルの中でもナンバーワン。 フランス国鉄(SNCF)の駅では、列車の発着案内は液晶モニター化が進んでおり、もちろんパリ北駅にも設置されていますが、このように古い装置もちゃんと残されています。 古めかしい駅の雰囲気ともマッチしています。 だだ一文字ごとにパタパタする為、全体の表示が切り替わるのにすんごく時間がかかります。 というか、常にどこかがパタパタしている状態です。 ロンドン行きのユーロスターやブリュッセル、アムステルダム、エッセン行きのタリスなどが表示され、ひときわ国際色豊かで旅情を掻き立ててくれるパタパタです。 どうやら待ち時間を解消する為の新手のアイテムのよう。運動不足解消しながらスマホが充電できるという一石三鳥的な発想。 僕も使いたかったんですが、彼女たちどいてくれませんでした。 TGVはリニューアルする度に残念な塗装になります。 今回はスポンサーからユーレイル・グローバルパスを提供して貰ってたので基本乗り放題なのですが、TGVと一部のInterciteだけは事前指定が必要で、その都度9〜18ユーロ徴収されます。 ここらへんが事前指定の要らないドイツのICEと比べるとTGVのイマイチ使い勝手が悪いところです。 ここと、昨晩降りたリール=ユーロップ駅。 前者が昔ながらの行き止まりの頭端ホームが並ぶ駅。駅舎も趣きがあり、歴史はあるもののローカル列車が主体に成り下がっています(リール止まりの一部のTGVも発着)。 後者はTGVの延伸とともに開業した近代的な駅で、ここでイギリス、ベネルクス3国に分かれる結節点となっており、まさにヨーロッパの鉄道の要衝。TGVやユーロスター、タリスがひっきりなしに発着しています。 ただ両者の距離は500mほど。間には巨大なショッピングモールがあり、徒歩での連絡が可能です。 ここリールのトラムの開業は1909年。実に100年以上運行され続けています。 今でこそ、フランスはトラム天国、百花繚乱の様相ですが、一時期モータリゼーションの発達でフランスのトラムは瀕死の状態にありました。その中でも生き残って営業続けているのが、ここリールと、マルセイユ、サン=テティエンヌの3都市だけなんです。 それ以外の現在走っている都市は、一旦は廃止されて復活したか、新設された都市です。 その意味では歴史あるリールのトラムですが、90年代半ばに近代化されて、それまでの主力だったデュワーグカーは駆逐さてしまいます。替わりに、イタリア・ブレダ社(後のアンサンドル・ブレダ社。今年、日立製作所が買収したフィンメニカ社の傘下企業)の低床車が導入されました。 が、このクルマ、イタリア製の割にはカッコイイとかオシャレというよりブルドッグのよな無骨なデザインで、個人的にはあまり好きではありません。 運転台の後ろに殆どの制御機器を載っけてるんで前面展望が出来ないのも大きなマイナス。 ただ乗ってみると、やたらと加減速が良く、昔の大阪市交の地下鉄20系のような甲高いVVVF音をキュンキュン鳴らして、懐かしい雰囲気には浸れますが(笑) とはいえ、好き嫌いで撮らない訳にもいかず一通り乗って、曇天でも綺麗に撮れそうな場所をロケハンしながら、なんとか撮影を済ませました。 さて、前置きが長くなりましたが、午後からは楽しみにしているトラムの保存鉄道を訪問します。 保存鉄道と言えば、蒸気機関車を思い浮かべることが多いかもしれませんが、欧米では少なからず路面電車を動態保存しています。ちなみにフランスで路面電車の保存鉄道を運行しているのはリールだけで、AMITRAM (←運転日やダイヤもこちらのリンクから確認可能)というボランティア団体が運営しています。ただ郊外のMarquette地区という住宅地の中にあり、決して行きやすい場所にはありません。 とりあえずは腹ごしらえ。 フランス全土に展開するパンのチェーン店「PAUL」。 日本でも敷島製パンがライセンスを受けて出店していますが、リールが発祥の地。そしてここがその本店です。 さすがに本店だけあって、雨ながらも行列ができています。 日本にはないマカロンやメレンゲなども並んでますが、野菜と鶏肉を挟んだサンドで簡単に済ませました。 実はどのバスに乗ればいいのか分からなかったのですが、何となくMarquette地区に行きそうなバスを路線図で探して、バスに揺られること30分。Googleマップを眺めながら近そうな停留所で適当に下車します。 というのも、今日(5/31)が今年最初の運行日。 ご覧のように、おじいちゃん達が運転のボランティアスタッフ。 右の432号が1921年製、左の小さい74号が1920年製でこっちは単車(非ボギー車)との説明でした。 今回乗る車両が一番古い車両で1910年製で、何と御歳105歳! リールに路面電車が開業したのが1909年なので、開業1年後から走っている車です。 で、客は僕一人。完全な貸切列車でした。 運転室にも入れてくれました。(と言ってもオープンデッキなんで誰でも入れますが) 僕もこの辺に住めば、最近サボってるジョギングも嬉々として続けられるんだけどなー、とか(笑) こんな住宅地の中で車両だけでなく、車庫、レールそして電気設備まで2kmの距離とはいえ維持費は相当なもの。 それでもボランティアと寄付だけで運営し、住民にも受け入れられて(←直接聞いた訳ではないけど)、あたかも現役路線かのように走る姿に、ヨーロッパの鉄道趣味に対する懐の深さを感じたのでした。 リール名物のムール貝の白ワイン蒸しを食べて体を暖めてから、パリに帰ることにしました。 (つづく)
by feel-railside
| 2015-10-03 21:38
| 海外
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