さようなら、ホルモンうどん
今回は7月に取材に行った、岡山県の山間部にあるホルモン屋さんにまつわるエピソード。

木造駅舎の取材で訪れた姫新線の美作江見駅。地味ながらもどこか懐かしさ溢れる味わいある駅で、最近はドラマやCMのロケにも使われている。
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実は、この地に立ち寄ったのは二度目。といっても駅ではなくて、駅近くの国道沿いにあるホルモン屋さん。

今から10年以上前。
同じ夏の日。
朝から沿線のひまわり畑と列車を絡めて撮り、
「さあ、お昼ご飯」
と国道を走らせるも、中々よさげなお店が見つからない。


延々と車を走らせた挙げ句、もうお腹も限界と偶々辿り着いたのがこのお店。
暖簾は出しているものの、
「ホントに営業してるの?」
と思うくらいのお世辞にも綺麗とは言えないお店。


引き戸を開けてると真っ暗。しかも店内は雑誌やら買い物袋やらで散らかっており、とても商売しているお店とは言えない状態。
「やっぱりダメだ」
と引き上げようとすると、奥からゴソゴソとおばちゃんが。


おばちゃん「うどんしか出来んけど、ええか?」
(ん?ホルモン屋なのにうどん???)
おばちゃん「ホルモン入りの焼きうどんよ。ちょっと鉄板の上片付けるし、今から冷房も付けるから、ちょっと待っとかんね。」
店というより、ばあちゃん家の台所でご飯を食べさせて貰っている感覚だった。


これが、ホルモンうどんとの出会い。後の「津山ホルモンうどん」としてB-1グランプリでも常連の人気メニューにもなる代物。しかしまだそんな言葉、市民権を得てない時代であった。


なかなかの美味ではあったが、料理と言うよりは「まかない」に近い感じだった。ただ、あの甘ったるい味付けが妙に後を引いて、たまに思い出しては懐かしく思えた。




あれから10年以上。再び、あの店に行ってみることにした。
10年の歳月は、そのお店を更に侘しくし、店内の散らかりようも10年増しであった。そしておばちゃんも。

相変わらず暗い店内。
「ごめんね〜。エアコン壊れたんよ。扇風機で我慢して。鉄板熱いけど。」
その声はまさしく、あの時の記憶のまま。
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「今日、大きいなす貰ったけん入れるよ。」
と、こちらの了解などお構いなしに、淡々とした手さばきで野菜、そしてぷりぷりのホルモンを炒めていく。

(あ〜、こんなだったな〜。あの時と違うのは店内の異様な暑さだけだ)


そして麺投入。
「兄ちゃん、食べそうじゃけん多めにしたけん。」
味付けはこれでもかというくらい、醤油をかける。
〆はドサッと三温糖。
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味もあの時の記憶のまま+αでホルモンの脂をよく吸った甘い甘い茄子♪


10年ぶり二度目の来店であること、東京から仕事で来た事などを喋ってると、
不意におばちゃんが、
「あと一週間遅かったら食べられんかったね。今月いっぱいで店たたむんよ。」


工エエェェ(´д`)ェェエエ工

直接の原因は、エアコンの故障とのこと。
「こんな暑い中、お客さん入れられんよ。新しいエアコン買ってまでねえ、、、」


「でもねえ、もう娘夫婦からは『お店でぽっくり行かれたら困る』とかずっと言われててね〜」
「でもこうやって、色んなお客さんと喋るのがボケ防止になっとったんやけどね」
「いつ閉めようかとずっと考えてはいたんよ」
「店閉めたら、娘夫婦と孫と一緒に暮らそうと思ってる」


更に、自分の健康のこと、孫のこと、F1レーサーが突如、来店した時のこと(※実はこの近くにTI英田というサーキット場がありF1パシフィックGPが過去2年だけ開催された)
延々と1時間以上喋り放し。
そろそろ、次の取材にも支障をきたしそうだったので退店を申し出る。

最後に店の前で記念写真。
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店の前に堂々と停めてる車(←おばちゃんの)が邪魔だったけど。


今日撮った写真をプリントして送ってあげること、ネットに載せるかもしれないことを伝える。

三度目はないか、と思うとちょと切ない気持ちに。
でも、10年間あの味を想い(?)続けてよかった。ギリギリで引き合わせてくれたのかもしれない。

「おばちゃん、孫に囲まれて元気でね」
それには、何も言わずに照れたような、笑いを殺したかのような表情。
おばちゃんは、バックミラーの視界から消えるまでずっと手を振ってくれていた。
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「鉄道デザインEx vol.7」2013年8月発売の誌面より
by feel-railside | 2013-10-14 22:00
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