大阪から札幌まで結ぶ、豪華寝台特急「トワイライトエクスプレス」も廃止まで1週間となりました。
関西には長く居たにも関わらず、結局乗らず終いで終わってしまいました。函館行や青森行の「日本海」には何度か乗っていたのですが、当時は「今の自分には分相応ではない」、などという思いもあったのかもしれません。
ただ2000年〜06年にかけて、湖西線の風景をライフワークにしていた時期があり、「トワイライト」も記録はしていました。しかしメインは485系の「雷鳥」や「白鳥」であり、「トワイライト」に関しては「ついで」撮りの感は否めません。色々と過去のポジやデータを漁っているうちに、何枚か印象に残る写真があったので、こういう機会しか披露することはないだろう、ということで公開したいと思います。
まずはこの写真。
2005年5月 湖西線・永原〜近江塩津 Nikon F6 AiAF Nikkor 50mmF1.4D RVP(+1増感)
何の変哲もない編成写真ですが、実は自分にとって大きな発見になった1枚でした。「トワイライト」のあの地味なダークグリーンは順光で撮れば撮るほど、真っ黒に写ってしまう撮影者泣かせの色です。今でこそデジタルで撮ればPC上で色の調整もできますが、フィルム一発撮りではなかなかそうはいきません。そこでその黒光りを利用して、その車体に鮮やかな緑を写り込ませれば色が引き立つのでは?と仮定しました。鮮やかな緑といえば、初夏の新緑。そしてその新緑が一番輝き引き立つのは半逆光の光線。あとはその条件に合う区間を、過去5年湖西線を取り尽くした沿線の脳内データから辿って、ピタリと適合したのがこの区間でした。それからというもの、新緑の時期が待ち遠しいこと、待ち遠しいこと。今でも、シャッターを切った瞬間から現像所からの仕上がりにドキドキしていたことを覚えています。
次に沿線から走る車内の様子を撮ったものを2点。自分には縁がない分、カメラから乗客の姿を捉えたかったのかもしれません。まずはサロンカー。
2001年8月 湖西線・近江舞子〜北小松 Nikon F100 AiAF-I Nikkor 300mmF2.8D RVP(+1増感)
大阪を出た下り列車が、最初に目にする美しい風景が琵琶湖。きっとこの区間なら、何人かはサロンカーから風景を楽しんでいるだろう、という仮定のもと、乗客の多いお盆の時期に沿線に出かけました。三脚にサンニッパをしっかりと固定して流し撮りです。流し撮りにした狙いは、やはり観るほうの視点が、車両そして乗客に向かわせる為です。南のほうから走ってきた列車に向かって、大きく手を振ります。「お、こっち見てくれてるぞ」ということで、すかさずカメラをパンニング。「あ、何かあそこに変なカメラマンがいるよ」恐らく、車内ではそういう会話だったのかもしれません。
次のターゲットは食堂車の「ダイナー・プレヤデス」。特に下り列車の日本海の夕陽を眺めながらのディナーは人気で、その予約は寝台券の確保以上に困難と言われています。
2007年9月 信越本線・青海川〜鯨波 Canon EOS 1D MarkIIN EF 300mmF2.8L IS USM ISO800
この日は金沢の489系ボンネット編成を利用した臨時特急「はくたか」が金沢〜上野間を長岡まわりで走った日でした。もちろんメインのターゲットはそれでしたが、折角日本海の海岸線まで来たので、夕陽をバックに走る食堂車を狙わない訳にはいきません。しかし、そうはうまくいかないものです。昼過ぎまでは快晴だった新潟県地方も、夕方前から雲がどんどん広がり、夕陽に輝く日本海はこの時点でなくなりました。それでも、なんとか暗い中流し撮りで撮った食堂車の風景です。当時はただのボツ写真と思っていましたが、今見返すと、屋根上の特徴的なAU12型のキノコ型のクーラーもあいまって、いい思い出です。
最後に、「トワイライト」の地味な色合いを利用した雪景色の一枚。
2003年1月 湖西線・北小松〜近江高島 Nikon F100 AF Nikkor 80-200mmF2.8D RHP
最初の写真では、あれだけ躍起になって色を出そうとしていましたが、逆にこの地味な色合いはモノトーン風景にこそ生きると思い、狙ったのが雪の風景。SLとまではいきませんが、艶を落とした車両はしっとりとした寒村の風景とよく合いました。
夏の青い海やきらめく夕陽を眺めながらの旅もいいかもしれませんが、やはり冬こそ日本海沿岸の醍醐味。こうした寒々とした風景を眺めて物思いにふけながら旅するのも、また一興だったかもしれません。結局、そのどちらの願いも叶いませんでしたが、、、
(おわり)